おしりが痛い、肛門が痛い、痔が痛い

いぼ痔

イボ痔（痔核）は、肛門の血行不良が原因でうっ血し、その結果として腫れた部分にイボができる状態です。
歯状線より内側にできたものは内痔核と呼ばれ、内痔核はさらに飛び出し具合（脱出度合い）によって、Ⅰ度からⅣ度に分類されます。
一方、歯状線より外側にできたイボは外痔核と呼ばれ、こちらは皮膚側に位置しているため神経が通っており、痛みを伴います。
このため、外痔核は内痔核に比べて強い痛みを感じやすいのが特徴です。

いぼ痔の治療方法

軽度の場合、外用薬を使った保存的治療が行われます。
同時に、規則正しい排便習慣を確立するため、生活習慣や食事内容を改善することが重要です。
保存的治療が効果を示さない場合には、結紮切除術が選ばれることがあります。
結紮切除術は痔核を外科的に取り除く手術で、痔核の血管部分を縛った後、切除します。

かんとん痔核

かんとん痔核は、進行したイボ痔で、脱出した内痔核が元に戻らなくなった状態です。
痔核が肛門括約筋に締め付けられ、急速に血流が悪化します。
その結果、血栓が形成され、痔核が腫れ上がり、非常に強い痛みを伴います。
この状態は、急性の疼痛を引き起こし、治療が遅れるとさらに悪化する可能性があります。

かんとん痔核の治療方法

かんとん痔核では、まず血栓による腫れと痛みを抑えるため、患部を温めて血行を促進し、座薬や外用薬（軟膏）を使用して炎症や腫れを軽減します。
腫れが治まった段階で、痔核の本格的な治療方法を決定します。
かんとん痔核の主な治療法は手術による結紮切除術です。
この手術では、痔核の根元を縛り、余分な部分を切除することで再発リスクの少ない状態を維持していきます。

血栓性外痔核

血栓性外痔核は、外痔核に血栓ができて腫れる状態で、いわゆる「血豆」と呼ばれるものです。
外痔核は皮膚側の神経が通っているため、血栓ができることで激しい痛みを伴います。
突然発症することが多く、便秘で排便時に強く息んだり、下痢で何度もトイレに行ったり、長時間座っていたり、冷えが影響することがあります。

血栓性外痔核の治療方法

血栓性外痔核では、血流を改善するために肛門を温めることが効果的です。
医療機関では、軟膏などの外用薬が処方され、痛みが強い場合には鎮痛剤が併用されることがあります。
保存的療法で効果が見られない場合、血栓が大きいときには、局所麻酔を使って患部の血管を切開し、血栓を除去する手術が行われます。

切れ痔（裂肛）

切れ痔は、肛門の粘膜が裂けることで発生します。
便が硬いときや排便時に強くいきむと、肛門の皮膚や粘膜に小さな裂け目ができ、痛みを引き起こします。
この状態では、特に排便時に鋭い痛みを感じることが多く、出血を伴うこともあります。

切れ痔の治療方法

切れ痔（裂肛）の治療の第一選択は、保存的療法です。
便を柔らかくするための排便調整や、外用薬を使用して症状を改善します。
しかし、慢性化していたり、肛門ポリープが伴っている場合、または肛門が狭くなっている状態（肛門狭窄）がある場合には、手術が必要となることがあります。
症状の程度や原因に応じて、最適な手術方法を選択します。

痔ろう（あな痔）

痔ろうは、肛門内の粘膜と皮膚の接点である歯状線周辺にある「肛門小窩」と呼ばれるくぼみに細菌が侵入し、膿がたまることから始まります。
特に下痢などで腸内の圧力が高まると、この部分が感染し、膿が溜まります。
感染が進行すると膿が溜まった部分に穴が開き、トンネル状の経路（瘻管）が形成されます。

痔ろうの治療方法

痔ろうの治療には、瘻管を切除する手術が一般的な第一選択となります。
手術方法にはいくつかのアプローチがあり、具体的には切開開放術、括約筋温存術、シートン法などが挙げられます。
これらの方法は、肛門括約筋への損傷を最小限に抑え、肛門機能を温存することを目指して選ばれます。

肛門周囲膿瘍

肛門周囲膿瘍は、細菌感染によって肛門周辺に膿がたまる病気で、痔ろう（あな痔）の前段階とも言えます。
肛門内にある「肛門小窩」と呼ばれるくぼみから細菌が侵入し、炎症を起こすことで膿がたまり、痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。
この状態が進行すると、膿が皮膚の方へ出口を求めて通り道（瘻管）を作り、痔瘻へと移行していきます。
そのため、早期の対応がとても重要です。

肛門周囲膿瘍の治療方法

肛門周囲膿瘍の治療では、たまった膿を外に出す処置が最優先です。
膿をしっかりと出せば、痛みや腫れ、発熱といったつらい症状は比較的早く落ち着きます。
膿のたまり方が軽度な場合や、腫れが小さい場合には、抗生剤や外用薬を併用しながら炎症を抑える保存的な治療が行われることもあります。
ただし、膿が深い場所にたまっている、あるいは繰り返す場合は、膿の通り道が形成されて痔瘻へと進行することがあります。
炎症が治まった後に痔瘻と診断された場合は、瘻管を取り除くための手術治療が必要になります。